Skip to the content.

導入すべきPython開発環境を選択する

公開: 2025-02-07 10:10:24(更新: 2025-02-09 21:35:12)

以前は手間暇をかけて、ローカルに開発環境を構築する必要がありました。ソースコードをダウンロードし、依存関係に注意しながらコンパイルを自分で行うというものです。BSD派とペンギン派に分かれて互いに切磋琢磨していた時代です。ワークステーションといえば、Sun Microsystems を指し、そこでも標準装備のGUIではなく、X11を自力でインストールしてカスタマイズすることに時間をかけていたものです。次第に、前者の方が使い勝手もよくなり、自作機が流行りました。その後、MacintoshがBSDをコアにした MacOSX となって、便利なパッケージ管理(MacPortsやHomebrewなど現在も続いています)が中心となり、数年前からは Cloud ベースのシステムも登場して、初学者の環境構築のハードルは格段に下がりました。選択肢が増えた分、何をどう導入するのがいまの自分にあっているのかで迷ってしまいます。技術レヴェルや扱いたい仕事量で最適な開発環境はそれぞれです。

ここでは、初学者から中級者を想定して、4つの開発環境を示します。よくわからない人は1番でそれほど不都合はありません。

1. Google Colaboratory

もっとも導入ハードルが低いにも関わらず、機能面も充実しています。学部の実習科目「環境シミュレーション実習」でも標準的に活用しています。実質的に環境構築をする必要がないにも関わらず、高速なGPUを使えるなど利便性も高いですが、ファイルの入出力のみ一工夫が必要です。といっても、それほど手間がかかるわけではないです。手間といえば、プリインストールされていない外部ライブラリを使いたい場合には毎回インストールをする必要があることです。Jupyter Notebook形式(IPythonファイル)が標準であり、コードのみでなく、実行結果を一つのファイルに保存し、さらに、マークダウンでテキスト情報も同時に扱うこともできます。もっとも便利に感じるのは、iPad や iPhone からもコードを修正をしたり、実行したりすることができる点です。なお、GitHub連携も可能ですが、Colabだけで管理するには、実質的にローカル環境でないこともあり、毎回 Copy した Jupyter Notebook を Push しないといけません(GitHubとGoogleDirveを二重に管理する必要があります)。一方で、変更履歴機能を独自に持っていること、グループ共用をしつつ、コメントを付け合うといった使いかたができ、初学者だけでなく、中・上級者にとっても良いところがたくさんある環境です。2年ほど前から Gemini が標準搭載され、AIアシストも含まれており、至れり尽くせりです。

2. VSCode と OS標準の Python

ローカル環境でもっとも簡単なものとして、VSCodeのみをインストールするものです。インストールしたVSCodeのなかで拡張機能を利用するためにさらに関連項目をインストールする必要があります。この環境では、組み込み関数はもちろんのこと、Python標準ライブラリ(random, math, csv など)は使えますが、事実上の標準である NumPy や pandas、matplotlib などの外部ライブラリを使うことができません(3番へ続く)。

3. Anaconda(と JupyterLab)

Pythonの統合的開発環境として conda システムのうち、もっとも有名な Anaconda をインストールすると、2番のような不都合がなくなります。Anacondaは多くの人々が使うであろう外部ライブラリのほとんどがパッケージになっています。インストールもダウンロードも含めて5分程度も見込めば十分でしょう。他にさまざまな開発ツールもパッケージとなっているため、Navigator から選ぶだけで GUI を中心とした利用ができます。しかしながら、好みのエディタを使いたい、GitHub 連携をしたいといったレヴェルになると、何かと煩わしく感じられ、初学者と環境を同じにすることは難しいと言えるでしょう。ただし、Jupyter Notebook やその上位互換である JupyterLab を使うと、初学者と上級者が歩み寄れる可能性があるかもしれません。

4. Anaconda と VSCode

上記の2と3番の欠点を補うには、VSCode と Anaconda を利用するのが一番楽でしょう。Anaconda の活用は conda システムでパッケージを管理するのみとし、実質的なフロントエンドは VSCode で一本化するという使いかたです。VSCodeを使えば、GitHub管理もそのなかで完結させられますし、教育機関所属の研究者や学生は無料で利用できる Copilot との連携もあります。この4番のインストールは2〜30分で済みますが、使いながら使い勝手をよくしていくように継続的に調整することも必要です。しかしながら別の見方をすると、それは好みの開発環境を徐々に構築できるという利点でもあります。VSCodeそのものの機能も豊富であるので、4番を選んでも使いかたはさまざまです。1番からのステップアップを考えると、VSCodeで主に Jupyter Notebook を使うというのがよいでしょう。そのうち、手が馴染んできますので、コマンドラインで素早く対応したり、好みに応じて機能を拡張したり、するなど便利に感じられるようになります。